甘え下手
心の内側
「大きなお世話です!」そう言って、イスから降りて休憩コーナーから出ようとした彼女の腕を思わず取った。


「な、何ですか?」


引きとめられると思ってなかったらしい彼女は驚いた様子で、俺の手をふり払った。

男に触られることに慣れていないだけなんだろうが、それでも俺はまたシャットアウトされた気がしたムッとした。


「金曜日」

「え?」

「泣きながら歩いてただろ」


正確には泣いてなかったけれど、きっとあの後一人で泣いたんじゃないかと思って、そんな言い方をした。

案の定否定しない百瀬比奈子は、不安げに視線をウロウロさせている。


「え? どこで?」


弱い自分を見られることに慣れていないんだろう、動揺を隠せない様子だった。


「それって告ってフラれたんじゃねーの」


もうちょっと優しい聞き方があるだろ、俺。

そう思いながらもストレートな質問しか出てこないのがやっかいな俺の性格。
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