甘え下手
***


「なあ、買いすぎじゃねーの?」

「大丈夫です! 阿比留さん大きいんだからいっぱい食べられるハズ!」

「俺、そんな大食いじゃねーんだけど……」


週末、待ち合わせ場所に現れた百瀬比奈子は両手に食材の入ったスーパーの袋を抱えていた。

何故か俺のマンションで料理を振る舞うつもりらしい。


おそらく外食をすると俺が支払うと思ってのことなんだろう。

どうしても俺が払ったクリーニング代が気になるらしい。


頑固な女だ。


並んでマンションまでの道のりを歩く俺らは、周りから見たらどう考えてもカップルそのもので、なんだか変な気分になる。

遊びの女に家で料理なんか作らせたことないし、そもそも自分のテリトリーに上がられるのは好きじゃない。


まあ、この子ならいいか。と思ってしまうあたり、俺はすでに百瀬比奈子菌に毒されているんだろうか。


「荷物よこせ」

「え? 重いからいいですよ」

「重いから俺が持つんだろうが。とっとと寄こせ」
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