甘え下手
「べつに。言葉通りの意味。誰かに聞いてもらうってアリだろ」

「なんで阿比留さん……」


ここまでしてくれるか、か。

実際、俺にもよく分かんねえし。


誰にも甘えられない彼女を見て、テコでも自分によりかからせようとしていることには間違いはないけれど。

百瀬比奈子とのその先に何があるのかは、今の俺にもよく分からない。


単に感情の流れに身を任せてるだけ。


だけど久しぶりに女の子に性的以外の興味を抱いたことには間違いない。


「さあな。来るの? 来ないの?」


戸惑いに揺れる瞳。

即決で断らないってことは、ある程度は俺にも心を許してるってことで。


「……し」

「し?」

「週末、にします……」


だけど百瀬比奈子が俺の言葉をどうとらえて、どういうつもりでそんな返事をよこしたかまでは想像もつかなかった。
< 106 / 443 >

この作品をシェア

pagetop