甘え下手
いくら経験不足の私とはいえ、このまま阿比留さんについていったらどういうことになるのかぐらい想像がつく。

阿比留さんは気持ちがなくても私をなぐさめてくれて。


私、そんなの望んでるのかな……。


だからやっぱりやめるって言いたいのに、口を開くことを許されてないからそれもできない。

私はいつものごとく阿比留さんの怒りスイッチを押してしまったらしい。


だからもうなぐさめる気なんてないんじゃないかと思うのに、車はいつか来た阿比留さんのマンションの駐車場へと入って行った。


「ついたから降りて」

「……はぁ」


デビルさんの迫力にうながされるまま車を降りてしまった。

そのままエレベーターに乗りこんでいる私は、お兄ちゃんからすればまた”ネギを背負っている”状態なんだろう。


阿比留さんがそれを食べるとはどうしても思えないんだけど。


「そういや室長は?」

「機材と一緒に社用車で帰りました……」
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