甘え下手
「き、嫌いじゃなかったら阿比留さんは女の人にこういうことするんですか?」

「そうだけど」


その言葉を聞いた途端に頭が冷えて、私は阿比留さんの手首を両手でつかむと、自分の顔から引きはがした。


「やっぱり無理です」

「何が」

「私はそういうの……無理です」


だってやっぱり望んでないもの。

気持ちが入ってない関係なんて。


「そんなの虚しいだけだと思います……っ」


思いきって阿比留さんの両肩を強く押すと、しゃがんでいた阿比留さんはそのまま後ろに倒れて尻もちをついた。

呆気にとられたような表情をしていたけれど、すぐにフンと不敵な笑みを浮かべた。


「好きだよ、比奈子ちゃん。愛してる」

「へっ?」

「そう言えば簡単にヤラしてくれんの? 言葉だけなら何とでも言えるだろ」


阿比留さんのスイッチをまたしても押してしまったことに気づいてはいたけれど、ここは譲れないところだと思った。


「それは違います」
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