甘え下手
カーペットの上に座り込んでいる私の目の前に阿比留さんがしゃがみ込んで、視線を合わせてくる。

太鼓を打ち鳴らしてるんじゃないかと思うほど、心臓の鼓動がドンドンとうるさい。


阿比留さんの大きな手が私の頬にすっと添えられた。


「あ、あの」

「目、閉じて」

「どうして……」

「野暮なこと訊くね、比奈子ちゃんは」


余裕の微笑み。

その瞳の魔力に思わず大人しく瞼を下ろしそうになったけれど、必死でこらえて口を開いた。


「だ、だからどうして阿比留さんは私にこういうことするんですか?」


しつこい自分をイケてない女だなと自分でも思うけれど。

流されたくはない。


阿比留さんは何言ってるんだコイツとでも言うような顔で眉根を寄せた。


「嫌いじゃないっつったじゃん」


今度は私が脱力する番だ。

阿比留さんとは話が通じない。
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