甘え下手
あれ? と思い出したのは沙綾が仕事から帰ってきた時だった。

21時を回っているのに阿比留さんからは何の連絡もない。


スマホを確認してもメールも着信もない。


沙綾がおでんを美味しそうに頬張っているのを見たら、お腹が鳴りそうになって慌ててダイニングを後にした。


仕事で遅いのかな。

こういう時食事はあきらめた方がいいもの?


経験がないからどういう対応をとったらいいのか、サッパリ分からない。


お風呂にも入れず、食事もとれず、私は忠犬ハチ公と化して部屋の中央にペタリと座って阿比留さんからの連絡を待っていた。


「お姉ちゃん、お風呂入んないの~?」

「……出かけるかもしれないから、いい」


沙綾が部屋のドアを開けて声をかけてきても、私はまだ座り込んだまま動かなかった。


「は? 今から? お姉ちゃん明日も仕事でしょ」

「……うん」

「お兄ちゃんいい顔しないからやめときなよー。昨日も帰ってこなかったじゃん」

「……」


なんだろう、私はいい歳をした社会人なのにこの子ども扱いは。
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