甘え下手
「比奈子ちゃん、俺の代わりに報告書書いてくんない?」

「出てないセミナーの報告書はさすがに書けません。ていうか私も出張報告書書かないと」

「あー、俺も比奈子ちゃんと一緒の出張がよかったー」

「参田さんは報告書書くのが苦手なだけでしょ」


目標以上の来客数を稼げたから今回の報告書は気楽に書ける。

だけどそれはたまたま出展していたブースの位置がよかったというせいもある。


もっと興味を引くためにレイアウトも工夫しないと……。


参田さんと話しながら、私はいつも通りの仕事モードに入っていき、そうなると櫻井室長のことも、阿比留さんのことも考える暇はなかった。


***


そわそわしだしたのは家に帰ってからだった。

お兄ちゃんも沙綾もまだ帰っていない自宅で、私は夕飯の支度をしていた。


私は阿比留さんと食事の約束をしているけれど、今日は食事当番だから二人の分は作らないと。

おでんをぐつぐつと煮込みながら、美味く味つけできたから阿比留さんにも食べさせたいなんて思ったりしていた。
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