甘え下手
そっか。

私、阿比留さんの彼女なんだ……。


「はじめまして。阿比留優子です」

「顔赤いけどホントに大丈夫かよ」

「だ、大丈夫ですってば。今日は突然お邪魔しちゃってすみません……」


顔赤いのは阿比留さんのせいじゃんって突っ込みもできずに、とりあえず優子さんに挨拶をする。

お兄さんのお嫁さんなんだということはすぐに分かった。


「いいのよ、翔馬くんが女の子連れてくるなんて初めて……よね?」

「えっ、そうなんですか!?」

「何その大げさな驚き方」


だって今までいっぱい彼女いたんじゃ……という私の気持ちを読んだらしい阿比留さんが白い目を向けてくる。


「翔馬くんにこんな可愛い彼女がいたなんて、知らなかったな」

「……最近だから。ホラ行くぞ」

「は、はい」


用意されたスリッパを履いていると、阿比留さんは優子さんの横をさっさと通り過ぎて家の中へと行ってしまった。

優子さんは終始柔らかい態度なのに、私は阿比留さんが少し不機嫌になった気がした。
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