甘え下手
リビングへ通されると、広いリビングの天井には見事なシャンデリアがぶら下がっていて、一般家庭にもシャンデリアってあるんだなんて場違いなことを思ってしまった。


広いリビングはそのままダイニングへと繋がっていて、キッチンの奥から阿比留さんのお母さんと思しき女性が姿を現した。

阿比留さんを思わせるつり目のハッキリした顔立ち。


栗色に染めたロングヘアにゴージャスなパーマがかかって、着ているのはシンプルな白のハイネックに花柄のスカートなのに、ゴールドのネックレスが目に眩しい。

見るからに上流階級のマダムって感じの方だった。


おかげで緊張のメーターが一気にマックスまで振り切る。


バクンバクン音が鳴りそうなくらいに激しい収縮を繰り返す心臓を必死でなだめながら、優子さんにしたのと同じように深く頭を下げた。


「はじめましてっ。百瀬比奈子です……っ」

「はじめまして。いつも翔馬がお世話になってます」

「いえっ……、こちらこそ……っ」


緊張で言葉が続かない。

いつもお世話になってるのは私の方だと言いたかったのに。


「まだ食事の準備が整っていなくてごめんなさいね。あちらに座っててくださる? 優子さんお茶お出しして」

「あ、あの私、お手伝いします……!」
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