甘え下手
「俺、翔馬の兄貴だって知られないようにしてたもん」

「……」

「……」

「……」

「まあ、まともに働いていれば文句は言わない」

「私はもっといい会社をお父さんに紹介して欲しかったわ」


しゃべっているのは阿比留さんのご両親とお兄さんだけだった。

阿比留さんは素知らぬ顔で食事を進め、優子さんは俯き加減でやっぱり黙々と食事をしている。


何これ。

何この食事会。


ものすごく不自然だよ。

阿比留さんも優子さんも平気なの?


そう思ったけれど、よそ者の私が口を開いていい場面じゃなかった。


その証拠に食事が始まってから誰も私に話しかけようとはしないし、こちらを気にする様子もない。

完全に空気扱いだ。


「コレ美味いな」


不意に阿比留さんの言葉が会話の流れを遮った。

皆が注目すると、阿比留さんはしれっとした顔でポテトサラダを食べていた。
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