甘え下手
「そういう意味じゃ、ありませんっ」


分かってるクセに意地悪だ、この人達。

プクッと頬を膨らませて立ち上がると、阿比留さんも笑って席を立った。


こうして一緒に立つと、阿比留さんはすごく身長が高い。

櫻井室長と、同じくらいかなー……。


「今度が楽しみだな。じゃあ、俺、マジで帰るわ。気持ちわりー」

「……本当にすみませんでした」


確かにカクテルで濡れたままじゃ、相当不快だろう。

そこは申し訳ないと思って、素直に頭を下げた。


頭を上げたときは阿比留さんはもう出口に向かう後ろ姿で、私に「大丈夫」とでも言うように手を上げてひらひらと振って見せた。

そういう仕草が嫌になるぐらい絵になっちゃうところが、阿比留さんらしい。


あの阿比留さんにカクテルぶっかけるなんて、沙綾ってば相当肝がすわってる。


そんなことをぼーっと考えていると、参田さんがポツリと「俺達、どうすっか。飲み直す?」と聞いてきた。
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