甘え下手
「自分の彼氏が妹抱きしめたとか目の前で言われたら、怒るの当たり前じゃん!」
虫の居所が悪かった私が沙綾に噛みつくと、それが意外だったのか沙綾は目を丸くした。
「そんな付き合う前のこと言っても仕方ないじゃん」
「付き合う前とか……! そんなの私知らないもん。言ってくれなきゃ分かんないっ!」
自分の中の正論をぶちまけると、沙綾はやれやれと言ったように首を振った。
「そんなの阿比留さん本人に言えばいいじゃん。お姉ちゃんあの時なんか言った?」
「……」
「言ってくれなきゃ分からないって……。そんなの向こうのセリフだと思うよ?」
「……」
「お姉ちゃんってさ、一人で恋愛してるみたい。楽しい?」
上から目線の『楽しい?』に私がブチ切れて沙綾に飛びかかると、沙綾も「お姉ちゃんに阿比留さんは勿体ないっつーの!」と応戦してきて私達はまたレスリングのスクラム状態になった。
運悪くお兄ちゃんは出かけていて、止める人もいない姉妹喧嘩は留まるところを知らず、最後はお互いひっかき傷ができるほどだった。
ドタドタとうるさいリビングの中で、鳴らないスマホだけがひっそりと静かにテーブルの上で存在感を主張していた。
虫の居所が悪かった私が沙綾に噛みつくと、それが意外だったのか沙綾は目を丸くした。
「そんな付き合う前のこと言っても仕方ないじゃん」
「付き合う前とか……! そんなの私知らないもん。言ってくれなきゃ分かんないっ!」
自分の中の正論をぶちまけると、沙綾はやれやれと言ったように首を振った。
「そんなの阿比留さん本人に言えばいいじゃん。お姉ちゃんあの時なんか言った?」
「……」
「言ってくれなきゃ分からないって……。そんなの向こうのセリフだと思うよ?」
「……」
「お姉ちゃんってさ、一人で恋愛してるみたい。楽しい?」
上から目線の『楽しい?』に私がブチ切れて沙綾に飛びかかると、沙綾も「お姉ちゃんに阿比留さんは勿体ないっつーの!」と応戦してきて私達はまたレスリングのスクラム状態になった。
運悪くお兄ちゃんは出かけていて、止める人もいない姉妹喧嘩は留まるところを知らず、最後はお互いひっかき傷ができるほどだった。
ドタドタとうるさいリビングの中で、鳴らないスマホだけがひっそりと静かにテーブルの上で存在感を主張していた。