甘え下手
私達が会う時にはいつも沙綾がいるんだから、沙綾のいないところで話を聞くと言うのは『電話で』という意味のつもりだった。

だけどそれは阿比留さんには伝わっていなかったようで、私のスマホはそれからも一向に鳴る気配がない。


本当ならすぐにでもフォローの言葉が欲しいのに。

言わないくせに伝わらないことにイライラする自分は、やっぱり恋愛偏差値ってヤツが低いんだと思う。


リビングのソファに座ってボスボスとクッションを殴って八つ当たりしていると、飲むヨーグルトを飲みながら沙綾がドアから入ってきた。


「ぷっ、お姉ちゃん。電話待ってるならかければいいのに」

「……べつに待ってない」


ソファの前のローテーブルにはいつでもとれるようにスマホが出しっぱなしにしてあって、電話を待っていることなんてバレバレだった。


「お姉ちゃんさあ、阿比留さんはスーパーヒーローじゃないよ?」

「……何、急に。そんなこと思ってないよ」

「そうかなあ。お姉ちゃん、何も言わないくせに阿比留さんには気持ち伝わってて欲しいとか思ってるんじゃないの?」

「……」


グサグサッ。

妹の言葉が的確すぎて、心臓に痛かった。
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