甘え下手
「何を?」
「阿比留さんが嫌いな阿比留さんのことです」
「何それ? 意味分かんね」
阿比留さんは苦笑したけれど、きっと意味は伝わったと思う。
だから私は黙ったままコーヒーを一口飲んだ。
「悪い人でもそれが阿比留さんなら私は知りたいんです」
「……オーケー。いいよ、何が知りたいの?」
阿比留さんは少し黙って考えていたようだったけれど、私の希望に応えてくれるみたいだった。
「なんでさーちゃんのこと抱きしめたんですか」
「抱きしめたっつーか、抱き寄せただけ。こうやって」
隣からにゅっと阿比留さんの腕が伸びてきて、私の腰あたりをつかんで引き寄せた。
カウンター用の高いスチールイスから立ち上がらざるを得なくなって、そのまま阿比留さんの左半身に密着した。
スーツから立ち上るシャープな香水の香り。
ドキドキしながらも胸が焦げる。
さーちゃんもこの香りを嗅いだんだと思うと。
「会社ですから」ともう何度目かのセリフを吐いて、阿比留さんの肩を押して離れると、阿比留さんは「沙綾と逆の反応」と言って笑った。
「阿比留さんが嫌いな阿比留さんのことです」
「何それ? 意味分かんね」
阿比留さんは苦笑したけれど、きっと意味は伝わったと思う。
だから私は黙ったままコーヒーを一口飲んだ。
「悪い人でもそれが阿比留さんなら私は知りたいんです」
「……オーケー。いいよ、何が知りたいの?」
阿比留さんは少し黙って考えていたようだったけれど、私の希望に応えてくれるみたいだった。
「なんでさーちゃんのこと抱きしめたんですか」
「抱きしめたっつーか、抱き寄せただけ。こうやって」
隣からにゅっと阿比留さんの腕が伸びてきて、私の腰あたりをつかんで引き寄せた。
カウンター用の高いスチールイスから立ち上がらざるを得なくなって、そのまま阿比留さんの左半身に密着した。
スーツから立ち上るシャープな香水の香り。
ドキドキしながらも胸が焦げる。
さーちゃんもこの香りを嗅いだんだと思うと。
「会社ですから」ともう何度目かのセリフを吐いて、阿比留さんの肩を押して離れると、阿比留さんは「沙綾と逆の反応」と言って笑った。