甘え下手

参田さんと駅で別れて、電車を乗り継いで家に帰った。

電車の中でも一人焼肉臭い気がして、周りが気になる。


一応、キオスクでガム買って噛んでみたけど。


まあ、明日は休日だし、出かける予定もないから別にいいか。

残念ながらデートの相手もいないし、なんて自虐的なことを考えながら、自宅へと帰った。


住宅街を歩くと、我が家の明かりが見えてくる。

二階の沙綾の部屋には電気が点いていない。


もしかして阿比留さんに怒ったその勢いで、どこかに行っちゃったとか!?


てっきり家に帰ってると思ったから、心配もしていなかったけれど、急に不安になってきた。

だってさーちゃん可愛いし、一人でフラフラしてたら高確率で男に絡まれるに違いない！


自然と家に向かう足が速くなる。

リビングに明かりが点いているのが見えてきて、どうかそれがお兄ちゃんじゃなくて沙綾でありますようにと祈るような気持ちで玄関に向かった。


急いで入ろうと、ドアの取ってに手をかけたところで、向こうから突然開いたドアに、私は思いきり額をぶつけてしまった。