甘え下手
心が風邪を引いただけ
『ごめんなさい……。私そんなに大変な状態だって思わなくて……』

『あの人は一人じゃ立ってられない人なんだよ。比奈子みたいに強くねーんだよ……』


ハッとする言葉だった。

私は確かに自分のものさしで優子さんの不安を測っていた。


優子さんがそんな行動を起こすなんて、私の常識の範疇からは完全に外れてたから、思いもしなかった。

人の気持ちに鈍感な自分が恨めしい。


部屋を出て行く彼の背中が映画のワンシーンのように遠く映った。

こんなに必死な阿比留さん初めて見たな……なんてそんなことをぼんやりと考えていた。


私はやっぱりどこかズレているのかもしれない。


「サイテー」


次に聞こえたのは沙綾の声で、ハッと我に返ると開いた部屋のドアにもたれかかって妹が立っていた。

苦虫を噛み潰したような顔。
< 380 / 443 >

この作品をシェア

pagetop