甘え下手
冷蔵庫のそばから、リビングテーブルに置いてあるスマホを見つめる。

足はテーブルには近づかない。


私はその場所から「ごめんなさい」と頭を下げた。

阿比留さんと向き合える強さがまだ持てない。


――『一人でも頑張れるけど、二人ならもっと頑張れる』


阿比留さんと付き合い始めたばかりの頃、恋愛している状態をこんな風に捉えていた。

パワーがどんどん充填されていく感じだった。


でも今急にエネルギーを補充されなくなると、私ってこんなにポンコツだったのかと自分でも驚くほど。

私は一人の頑張り方を忘れちゃったみたい。


結局立ったままノンアルコールのカクテルを飲みほしてしまった。


どれだけ飲んだところで酔えないのに。

これって不毛だよ、阿比留さん。


着信はしつこすぎない長さですぐ切れた。


私がわざと出ないことをもう予想しているのかもしれない。

どこかで区切りをつけなくちゃいけない、壁にかけられたカレンダーを見てぼんやりとそんなことを思った。
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