甘え下手
「かっこ悪い……」


とつぶやくと阿比留さんの腕にぐっと力が入った。

そのまま抱きしめられる。


阿比留さんは私の耳元に唇を寄せるように髪に顔を埋め、「俺の方がよっぽどかっこ悪い……」とつぶやいた。

その言葉の意味が分からなくて、つい普通に「どうして?」と返してしまった。


あんなに避けていたのに、話すのはあれ以来なのに、案外普通に話せるんだなと自分でも驚いた。

胸に刺さる棘のような痛みは未だに続くのに。


「この一週間、比奈子の家に近寄らせてもらえなくて、今日土下座してやっと比奈子が旅行に行ったこと知ったから」

「え……。い、家!? 阿比留さん、家に来てたんですか!?」


しかも土下座!?

阿比留さんが土下座?


さっぱり意味が分からない。


照れからなのか答えない阿比留さんに、私はおそるおそる顔を上げて阿比留さんにもう一度質問をした。


「あ、あの土下座って一体誰に……」
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