甘え下手
しゃがみこんでじっと考える。

今の関係を変えたいのか、変えたくないのか。


ぬるま湯に浸かってるのか、そこから出て新しい世界へ踏み出すのか。

私はどうしたいのか。


――答えなんてきっと出ている。


だから私は櫻井室長の腕を取ったんだ。

阿比留さんが、そのキッカケをくれたから。


「ヨシ!」


自分に気合を入れて、えいっと立ち上がる。


「顔……、洗っていくべき?」


顔洗ってきますなんて言ったものの、メイク落としなんてあるわけないし。

せめて化粧ポーチ持ってきてメイク直しすればよかった。


そんなことを考えながら、何気なく鏡の横にある戸棚を開けてしまった。

家だとそこにメイク落としをしまっているから、その習慣でなんとなく。


だけどそれを目にした瞬間、電流を流されたかのような衝撃で、私の身体は固まった。
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