うさぎの学習



夕方の6時半過ぎ、私は店の鍵を開けた。


ジャンボうさぎと命名された翌日を除いては、無遅刻無欠勤で、今では営業までの準備も手際よくこなせるようになっていた。


真面目に真面目に、雑用を頑張った。


だって、それ以外ママとえりさんに勝てる要素は何もなかったから……。


年齢も、容姿も、接客も、売上も、私は全て劣っている。


洗濯機から、オシボリを取り出し巻く。


満月ママって……あの若さで意外な面があった。


お金にきっちりと言うか、かなりシビアな考えを持つ人だった。


こんなオシボリなんて、普通は業者に頼む筈なのに、自分とこで洗っているし、冷蔵庫内の食材も無駄なく使う、余計な電気のつけっ放しは許さない。


そう言えば、ママとえりさんと私……考えてみれば不思議な3人だった。


だって毎日、店で顔を合わすけど、この2人がお昼、どんな生活をしているのか私は全然知らなかったし、私の生活も2人は知らない。


ナイトゲーム……
この店だけが、3人を繋ぐたった一つの場所。




 
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