32回、好きって言うよ。
サッカーの方から聞こえた声に、クラクラする頭で振り向くと、目の前に広がったのは黒のジャージ。
……どうなってるの?
その広い背中は、翼先輩に似てる。
「こんな方まで蹴るな」
そう言った彼は、キャッチしたらしいサッカーボールを三年生の方に蹴った。
サッカーボールが当たりそうだったのかな?
危ないって、もしかして。
庇ってくれた……とか?
うまく働かない頭で考える。
「大丈夫か?」
振り返った彼は、やっぱり翼先輩。
「翼せんぱ……」
ありがとうございます、と言おうとした瞬間。
フワッと浮いた身体。
「……え…!?」