彼と彼女の場合
「本当は帰したくないんだけどね…」

「え?」

「なんでもないよ。気にしないで」

「あ、はい…」


それから相沢さんは運転しながらいろんな話をしてくれた。

マスターに今日は私を早くあがらせるように頼んだんだ。

とか、

いつものあの席に座るのは実はカウンターの中でケーキを準備する私が見えるから。

とか…。

そんなに前から私のことを見ていてくれたんだとわかってすごく嬉しかった。


「到着」

そう言われて相沢さんの横顔に向けていた視線を前に移すと、

「うわー!すごいです!」
都内だとは思えないきれいな夜景が広がっていた。

「降りようか」

「はい!」


車から降りて少しだけ歩くとますますよく見えるところに出た。
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