社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)



それを追うように視線をテーブルに向ければ、社長の弁当も会長の弁当も中身が一緒だと気付く。



これは…





「気付いたのかい?今日は私の分も優子さんが作ってくれたんだよ。いいだろう?」





俺の考えに気付き嬉しそうに話す会長と、更に不機嫌な顔をし、おひたしを口に含んだ社長。


しかしモグモグと動かす度に不機嫌な顔が和らいでいく。





「親父が作ってくれと言ったからだろ」

「いいだろう?私だって優子さんの作った弁当が食べたい」





そんな親子の会話を聞き、社長室を出た俺は少し思い出していた。


奥様も会長も知らない俺だけが知っている、社長と奥様が初めて出会ったあの日を。


いや、正式に言えば社長が偶然街中で見かけた奥様に一目惚れしたあの日の事を。



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