海の城 空の扉
「何も言うな。今は何も」

アスタリスは、まっすぐにラドリーンの目を見つめた。

夏空のように青く青い瞳に、一瞬、影が差した。

それが哀しみの色だったのか、光のいたずらだったのか――ラドリーンが確かめるより前に、アスタリスは顔を少し傾けた。

唇にあてられた指に代わり、優しい口づけが落ちてきた。ラドリーンは素直に、アスタリスの腕に身体を預けた。

口づけは次第に熱を帯びて、ラドリーンの言葉どころか、声さえも奪いさった。

気がついた時、ラドリーンは寝台にそっと押し倒されていた。

ラドリーンはふっと微笑んだ。

「なぜ笑う?」

アスタリスは顔を上げ、上から見下ろすように尋ねた。

輝くオーロラ色の髪が、ラドリーンの上にこぼれてくる。まるで光のようだと、ラドリーンは、ぼんやりと思った。

「ラドリーン?」

「今、やっと分かったの」

「何が?」

「リナムの様子が、どうしておかしかったのか、今、分かったの」
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