海の城 空の扉
「どこから入って来たの?」

ラドリーンはそう言ってから、間抜けな質問だったと思った。

自分が通ったあの通路からに決まっている。


アスタリスは顔を上げてラドリーンを見た。


「起きていたのか」

「話し声が聞こえたから」


ラドリーンが床に足を下ろそうとすると、アスタリスが手で制した。


「そこにいろ。夜着のままでは寒い」

「でも……」

「俺がそっちへ行く」


程なく寝台の帳が大きく開かれた。

アスタリスが寝台の脇に立ち、ラドリーンを見下ろす。

彼は背丈こそ高かったが、城にいる<騎士>たちのような厳つさはなかった。

が、威圧感は十分で、ラドリーンは思わず奥へ後退りした。


彼の口元をよぎったのは笑みだろうか?


アスタリスは寝台に浅く腰掛けた。

その背には革紐をつけた竪琴があった。

光っていると思ったのは、アスタリスの肩に止まっているトカゲのせいだった。

トカゲは仄かに赤く輝き、アスタリスの髪に真紅の輝きを与えていた。

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