宝物〜絆〜
「いやぁ、やっぱ味噌汁は赤だしが一番だよな。向こうじゃ合わせがメインで赤だしなんてほとんど売ってなくてさ」

 秀人はしみじみとした口調で言う。

「マジか。赤だしがないのはキツイな」

 私も断然、赤だし派。味噌汁に限らず味噌ラーメンも赤味噌じゃなきゃ嫌だ、というこだわりがある。

 なにしろ合わせ味噌のラーメンって、全部かは知らねえけど妙に辛めに仕上げてあって、具もネギにもやし、メンマにチャーシューにゆで卵という、私にとっては味噌ラーメンらしからぬ具材ばかりなんだから。

「だろ? あっちじゃラーメンも合わせ味噌だから嫌んなっちまうよ」

 まるで私の思考を読み取ったかのようにラーメンの話をする秀人。

「えっ? 秀人くんはここが地元じゃないの?」

 永田さんは不思議そうに首を傾げる。

「あっ俺、地元はこっちなんすけど、ちょっと事情で神奈川に居たんすよ」

 秀人は言いながら味噌汁の入った茶碗を置いた。

「へえ。神奈川にねえ。神奈川のどの辺り?」

 永田さんは興味津々といった様子で質問を重ねる。

「茅ヶ崎です」

 秀人が神奈川に何年か住んでいたと知った永田さんは、こんな調子で休憩時間中ずっと秀人に質問していた。

 そして穏やかで平和な休憩時間が過ぎ、午後からのバイトが始まる。
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