宝物〜絆〜
「永田さん。そのコーヒーって誰が飲んだんですか?」

 私はふと疑問を口にした。

 何故か気になる永田さんの対角線上に置いてある紙コップ。位置的に考えると永田さんが飲んだ訳ではないだろう。

「えっ? あら。あの子、片付けずに帰っちゃったのね」

「あの子って?」

「香奈ちゃんよ。どうしたの、突然」

 永田さんは不思議そうに私の顔を覗き込んだ。

「香奈、来たんですか? あっ、いや……。何でもないです」

 あまり突っ込みすぎると、確証もないのに香奈の立場を悪くしてしまう。そんな考えが過ぎって、私は慌てて訂正した。

 でも香奈は一体、何をしに来たんだろう? まさか、これをやる為に?

 私は、再度ロッカーに視線を移す。

 その時、永田さんに変わって店長が、相変わらずのからかい口調で教えてくれた。

「美咲ちゃん。話を逸らしたいからって、意味が分かんないトコで突っ込みすぎ。香奈ちゃんは忘れ物を取りに来ただけだよ」

「アハハ。バレました?」

 店長が素敵な勘違いをかましてくれてるが、事実、違った意味で話を逸らしたかったから、私は敢えてそれに合わせる。

「いやぁー。若いって良いねえ」

 まだ何か言っている店長は秀人に任せるとして、私は目の前の事態をどう片付けるかを考える事にした。
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