BirthControl―女達の戦い―
譲にとって苦渋の決断だったが、やはり自分の娘を死なせるくらいなら、認めざるをえなかった。


「わかった……

すぐに手配しよう……」

そう言った譲の顔を、和子が驚きを隠せない懇願するような目で見つめてくる。


妻の思いはわかるけれど、娘の気持ちは変わることはないだろう。


譲は妻の顔を見返してから、ゆっくりと首を横に振った。


すると和子は衝撃を受けたように動揺して視線をさ迷わせる。


けれど、もうダメなんだと諦めたのか、悔しさを顔に滲ませて涙を堪えるように唇を噛み締めた。


「ありがとう、お父さん……

お母さんもごめんね?

でも私はもうこの家では暮らせないし、二人の娘でもいられない

こんな娘がいたら、二人の立場も悪いと思うから……

施設に行くことが決まったら、親子の縁を切って?」


「――ッ!」

「――ッ!」


譲も和子もその言葉に衝撃を受け、何も答えることができなかった。


ただただ目の前にいる娘を見つめることしか出来ない。


そんな譲達を尻目に、遥香は最後に微かな笑みを浮かべて小さく呟いた。


「それが、私がお父さんとお母さんに出来る最後の親孝行だと思うから……」



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