BirthControl―女達の戦い―
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(あれから五年か……)


遥香の希望通り、譲はOldHomeに住み込みで働けるよう動いた。


住み込みとはいえ、他の住人のように強制的に収容されているわけではない。


だから他の通いで働いている下流の者達のように、いつでも希望すれば外には出られるのだ。


だが遥香が家に戻ることは五年の間、ただの一度もなかった。


縁を切ってくれと言われたけれど、縁を切られたのは自分達の方だと譲は思う。


あれから和子は一切遥香の話をしない。


そして娘を忘れるためかのように、政治活動に専念するようになっていた。


コンコンとノックの音がして、秘書の夏木が顔を出した。


「大臣、お時間です」


「あぁ、わかった、今行く」


譲はあの事件で反対勢力を極秘に始末したおかげで、自分の推進する法案をなんなく形にすることが出来た。


そして二年前その法案は可決され、譲と和子の功績を評価した総理は、厚生労働大臣と副大臣を任命したのだった。


あの時、遥香が言っていたOldHomeへの権限は、今となっては名実共に譲が実権を握っている。


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