BirthControl―女達の戦い―
ギラギラと照りつける太陽に目を細めながら、職場へと向かう。


洋一は、パルプ会社で経理の仕事をしていた。


とは言ってもほんとにまだ下っ端で、営業が持ってきた領収書を点検したり打ち込んだりと、誰にでも出来そうな仕事ばかりだ。


洋一の後から入ってくる社員は、もうすでに重要な仕事をやらせてもらってると言うのに、未だに簡単な仕事しかさせてもらえないことに、洋一は不満を持っていた。


それに加えて家に帰っても安らぐ場所はなく、排卵日以外の日は、家に真っ直ぐ帰る気がしなかった。


ふらふらと街を歩いている時に見つけた、少ない小遣いでも呑むことが出来る安いスナックに、洋一はいつしか通うようになっていた。


スナックのママをしている礼子は、今の洋一にとって唯一の癒しだった。


礼子の人柄なのか、いつ行っても店は繁盛しており、薄暗い店内はママ目当ての客で溢れている。


忙しくても客の一人一人に気を配る礼子は、初めて訪れた洋一にも優しく声をかけてくれた。


無造作にアップにされたうなじから出る後れ毛は、妙に色っぽく艶かしい。


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