BirthControl―女達の戦い―
「じゃあ久枝さん、こちらに入ってもらえますか?」


いつものように、いつもの手順で久枝を部屋に招き入れると、パネルを操作し、部屋の中央に設置されたカプセルの蓋を開けた。


「ではそのカプセルに入って横になってください

検査はすぐに済みますから、心配しなくても大丈夫ですよ?」


そう言って安心させるようににっこり微笑む。


最後くらい穏やかな気持ちで死なせてやりたい。


高志はせめてもの償いのつもりなのか、この作業を行うときには必ずそう言って安心させるのが習慣となっていた。


どうせすぐに意識はなくなるのだから、苦しみはないはずだ。


ならば敢えて恐怖を植え付ける必要もない。


もしかしたらそうすることで、自分の罪の意識を少しでも軽減したかったのかもしれないけれど。


久枝を誘導し、カプセルに横たわらせると、蓋をするためにパネルに手をかけた。


「では、蓋を閉めますので手を出さないで下さいね?」


手を挟まないようそう注意を促すと、久枝は小さく頷いた。


パネルを操作し、蓋を閉めようとした瞬間、久枝が高志の目をしっかりと見据えて呟いた。


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