BirthControl―女達の戦い―
高志は今日の分の電力供給量を設定すると、次に犠牲になるはずの高齢者の名前を思い浮かべる。


このB棟の詳細は高志以外の誰も知らないため、“あの部屋”に連れていくのも、処理をするのも全て高志の役目だった。


施設が出来てからの数十年間、休むことも許されず、毎日毎日同じことを繰り返してきた。


それだけに死んで行く者たちのことを人として認識していなかったのかもしれない。


電力のために必要な資源としか高志は思っていなかったのである。


だから高志がこんな気持ちになったのは初めてだった。


自分の感情に戸惑いながら、しばらく流れていくカプセルを呆然と眺める。


ふと背後で何か動いたような気配がして振り向く。


声を出す間もなかった。


大きく振り上げられたモップの柄のような物が自分の頭を直撃した瞬間、周りの光景がスローモーションに変わる。


その先に見えたのは……













険しい表情で俺を睨み付ける、遥香の顔だった……


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