BirthControl―女達の戦い―
「遥香……

久枝さんは遥香にとって大切な人なんだな?

きっと久枝さんにとっても遥香は大切な存在なんだと思う

だからこそ自分に出来ることで、遥香やこの国が変われるなら、役に立てるならって思ってるんじゃないか?

遥香が久枝さんを死なせたくないのと同じように……」


一旦言葉を切って遥香の様子を窺ってから、要は続ける。


「それに遥香……

もし久枝さんの命を救えたとして、何か変わるのか?

別の75歳以上の高齢者が代わりに死んでいくだけじゃないのか?

お前は久枝さんを助けるためだけにOldHomeに入ったのか?

この国を変えるためじゃなかったのか?」


遥香は黙ったまま要の言葉を聞いていた。


時々、鼻を啜るような音が聞こえる。


泣いているのだろう。


遥香は自分の使命を忘れたわけじゃない。


ただ、久枝を助けたいだけなのだとわかってる。


だけど、それではこの先には進めないのだ。


梨央たちだって久枝を助けたい。


それでも計画を実行しなければ、あの事件で死んでいった仲間たちにも顔向けが出来ない。


だけど遥香が納得しなければ、この計画が実行できないのも確かだった。


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