BirthControl―女達の戦い―
遥香はその顔を見てやっぱり自分は死ぬんだなと悟る。


「ごめんな……?

助けるって……言ったのに……ウッ」


(そんなことない……

来てくれて嬉しかったよ……

会えて嬉しかったよ……

だけど、欲を言えば梨央さんにももう一度会いたかったなぁ……)


そう伝えたいのに言葉に出来ないのがもどかしい。


「あ……りが……」


遥香は最後の力を振り絞って要にありがとうって伝えたかった。


だけどそれさえももう口にすることが出来ないらしい。


最後の方は声にならず、口を僅かに動かせたくらいだった。


瞼が自然と落ちてくる。


まだ要の顔を見ていたいのに、それは叶わないみたいだった。


ふいに目尻から涙が一筋こぼれ落ちる。


悲しくて泣いてるんじゃない。


悔しくて泣いてるんじゃない。


みんなの笑顔がたくさん見えた気がしたから……


(私の死がこの歪んだ世の中を変えてくれるきっかけになりますように……)


そう願ったと同時に、遥香の意識はプツリと切れた。



< 304 / 406 >

この作品をシェア

pagetop