BirthControl―女達の戦い―
それから、こちらこそと言葉を続ける。


「菊地さんのこと、ずっと心配してたんです

他の……父の釣り仲間は、私のところに何度も通ってきました

もうその頃には何も感じなくなって、諦めていたんですけど……

好き勝手に自分の体が弄ばれるうちに、初めてでショックは大きかったけど、菊地さんのそれはすごく優しくかったんだなって……思うようになったんです

だから……いつか会えたら自分を責めないでほしいって伝えたかった

きっと優しい菊地さんは自分のしたことを悔やんでしまうと思ったから……」


いつの間にか視界が歪んで見えた。


自分が泣いてるんだと気付いたのは、礼子にハンカチを差し出されたからだった。


(あんな思いをしたのに、俺を恨むどころか心配までしてくれてたなんて……)


裕之と礼子は形は違うけれど、お互い底無し沼に沈みそうになっていたのかもしれない。


だけど差し出された木の枝をようやく掴んで、沼から抜け出すことが出来そうな気がする。


(しのぶを迎えに行こう……)


裕之は礼子のおかげで、ようやくそう決心がついた。


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