BirthControl―女達の戦い―
文雄の守るべき者が芳枝なんだとしたら、芳枝の守るべき者は子供たちになっていたのだ。


妻が文雄に依存しているとばかり思っていたけれど、蓋を開けてみれば、文雄が妻に依存していたんだと気付く。


このままでは自分は捨てられてしまうんじゃないかと、文雄は恐怖におののいた。


「待ってくれ!

お前は貧乏な生活がどんなに辛いかわかってないんだ!

口では何とでも言えるさ

でも実際にそうなったら耐えられないに決まってる!」


懇願するように文雄は必死にそう言った。


無理だと伝えたかった。


体の弱い妻が働いて三人の子供を養うなど無理なんだと……


(……子供などどうでもいいじゃないか!)


老いていくばかりの文雄たちと違って、あの子たちには未来がある。


少子化対策支援法が廃止になったからって、子供が国の宝であることは変わらないはずだ。


だとしたら、文雄たちじゃなくてもきちんと保護されてそれなりに暮らしていける。


妻は揺るぎない眼差しで文雄をじっと見ていた。


まるで自分の決心は変わらないのだとでも言うように……


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