BirthControl―女達の戦い―
「OldHomeには、あなた一人で入ってください

そこで……ゆっくり余生を暮らしたらいい……

私は、一人でもあの子たちを育てます

それこそ国と相談して、私でも働けるところを紹介してもらうつもりです

家もここが無理なら、下流世帯区域だった団地に越したっていい

何を言われようと……

私の気持ちは変わりません」


(……なぜなんだ?

なぜ、俺の気持ちが伝わらない)


ただ、芳枝に苦労させたくないだけだというのに……


今の芳枝には何を言っても無駄なのだと、文雄は仕方なく諦めた。


だが、だからと言って自分が一人だけ施設に入ろうとは思わない。


夫婦で入らなければ意味がないのだ。


文雄はこの事態を何とか変えようと頭を巡らす。


(そうだ!)


子供たちさえいなければ、芳枝もその気になるに違いない。


あの時、礼子にしたように、今回も何か名案が浮かぶはずだ。


「あなた……?
何を考えてるんです?

もう誰かを犠牲にするようなことは考えないでください!

私たちは自分が犯した罪を、きちんと償わなきゃならないんです

自分たちだけが良ければそれでいいって考えはもう捨てましょう?

あなたさえ良ければ、一緒に働いて子供たちを育てていきましょうよ?

ねえ、あなた?

私は子供たちと同じようにあなたも失いたくないんです

だけど……それは子供たちがいなければ叶わない

子供たちがいなくなれば、私は……もうあなたの傍にはいられない……」


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