BirthControl―女達の戦い―
いつまでも子供が出来ないペアでいることは、イコール非国民だという扱いなのだ。


一応、恋愛は認められてはいるものの、それは子供がたくさん出来た場合に限って称賛されるものであり、三年以内に子供が出来ない夫婦はそれぞれの両親からも冷たい目で見られる。


なぜなら、子供がいることで生活は裕福になり、逆に子供がいない家には重税が課せられるため、生活は貧困になっていくからだ。


今、日本はまさに子供がいるかいないかで左右される世の中になっていた。


子供のいない百合子達に課せられた税金は重く、狭い団地に住むのが精一杯で、洋一の収入だけでは生活は厳しく百合子も働かざるをえなかった。


2DKの狭いキッチンに向かい、手早く朝食の後片付けを終わらせると、百合子は仕事に行くための身支度を始める。


軽く化粧をして、動きやすいジーンズとTシャツに着替えると、鞄に財布とハンカチを押し込んで、鍵を掴んだ。


週に5日のパートは、百合子にとって背に腹は変えられない大事な収入源でもある。


(遅れたら大変!)


急いで家を出ると、階段をかけ降り、自転車に跨がった。


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