BirthControl―女達の戦い―
少し高台にあるこの病院には入院施設もあり、この地域では一番設備が整っていた。


その病院から少し離れた場所にしのぶの実家はあった。


上流世帯に相応しい広大な敷地には、25メートルのプールが庭にあり、娘の海美の目当ては、このプールのことだった。


どうやら水はもう入れてくれているようだ。


今日、子供達を連れてくることを連絡してあったから、きっと母が気を利かせてくれたんだろうと、しのぶは思った。


門をくぐり4台は置けるだろう駐車場に車を停める。


久しぶりの実家に、しのぶは自分がホッとしているのを感じた。


荷物を持って玄関に近付いていくと、しのぶが小さい頃からお世話になっている家政婦の貴和子が扉を開けて出迎えてくれていた。


この広い家を母が一人で管理するのは難しく、母自身も看護師として父の病院を手伝っているため、しのぶが生まれる前から彼女はここで働いてくれている。


事情はよくわからないけれど、結婚もせず子供もいない貴和子にとって、ここで住み込みで働くことは、下流世帯区域で一人で住むよりもはるかに待遇がいいようだった。


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