西澤さんと文子さん


「離婚・・・どうして・・・家族のために・・・こんなに尽くしてきたのに・・・」


今にも鳴きそうな声でつぶやく父。時間が経つにつれ、酒の量が増えていく・・・
そんな父の視界にふとあるものが目に入る。それは、家族写真。まだ、創輔も智視も文子もあどけない子供だった頃の写真。父は、この写真を肌身離さず持ち歩き、これをもって世界中へ単身赴任を繰り返していた。



「創輔も結婚・・・・智視はデキ婚・・・今度は文子が離れていくんだ・・・。」



コンコン

「お父さん・・・。入っていい?」

文子が、おつまみを持ってドアの向こうに立っていた。しかし、父はドアを開けようとはしない。


「お父さん?」
「・・・。」


文子は、ドアを開けようとはぜず、ただ、その前に正座し口を開き始めた・・・。

< 130 / 254 >

この作品をシェア

pagetop