西澤さんと文子さん

「西澤さん・・・すごく優しいし、すごく大事にしてくれるの。」

「・・・。」

「この前ね、インフルエンザになったの。その時も、病院まで連れて行ってくれたし、家で仕事してたら、お菓子を持ってお見舞いに来てくれたんだよ。」

「・・・。」

「それに・・・“頑張り過ぎは体に悪いから”ってすごく心配してくれたり・・・」


「・・・。」


「確かにお父さんが言ったとおり、お仕事はしてないよ。でも・・・私は、西澤さんが好きなの・・・」



「プロポーズもされたよ“結婚式も、指輪も渡せないし、ドレスも結婚式も出来ないと思う。こんな俺だけど、ずっと、一生傍にいてくれませんか?”って。」



「・・・。」



「おとうさん・・・西澤さんとの結婚・・・認めてください・・・。」

「・・・文子・・・。」

か細くなった父の声が、ドアの向こうの文子の耳に入ってくる・・・。
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