西澤さんと文子さん
「お父さん。」
西澤は、父の近くまで駆け寄り正座をすると、深々と頭を下げ「ありがとうございます!必ず、文子さんを幸せにします!」と今まで以上の大きな声で堂々と宣言した。
それに答えるように、父も座りなおし「文子をよろしくお願いします。」と深々と頭を下げた。
(お父さん・・・亮太にお嫁さんが来ましたよ。)
西澤の母は、足元に置かれた小さな風呂敷包みに手を置いて、心の中でそうつぶやいた。
西澤の父親は、和明が生まれる少し前に交通事故で亡くなった。子供たちの為に女手一つで育ててきた彼女にとって、今日は一番幸せな日であった。