西澤さんと文子さん
土曜日 朝9時30分
文子は、待ち合わせ場所の公園にたどり着いた。そこにはまだ西澤の姿はなく、ぽつんと一人でベンチに座る。
「やばい・・・早く来過ぎた。」
文子は、早く到着したことへの焦りと、いつもは着ない淡いグリーンのワンピースにおしゃれなヒールのパンプスといういでたちで待つことへの緊張、そして西澤に会うことへの不安で、気持ちがカオス状態に陥っていた。何を考えるにも“最悪の結末”しか算出しない頭の思考。それがさらに文子を苦しめる。
午後10時
西澤の姿はまだない。
午後10時30分
まだ西澤の姿は見当たらない
午後10時50分
西澤の姿は・・・ない。
文子はの中で何かが切れる音が響いていた。
その時・・・
「あの・・・安西さん・・・ですよね?」
怒った気持ちを必死で封じ込めながら、文子は顔をゆっくり上げる。そこには、申し訳なさそうな顔をしながら文子を見つめる西澤がいた・・・。