西澤さんと文子さん

その日の昼過ぎ


「亮太さん、亮太さん!」


少し体力が回復したのか、文子は起き上がると、横の長いすで眠る西澤を起こし始める。その横では・・・


「きゃふ・・・む~・・・」


「かわいい!」
「ほっぺやわらかい!」
「手、こんなに小さいんだ。」
「あっ、指ギュて!ギュッてしてる~!!」


当の本人たちより赤ちゃんに夢中の家族たち。和明は、その様子をカメラの中へと納め続けていた。


「ぅあ・・・文子さん・・・?」
「おそようございます(笑)」
「・・・ありがとう。」


西澤は、文子の横に座りぎゅっと抱きしめる。そして耳元で


「赤ちゃん・・・ありがとう・・・。」


文子の背中に少しの水気を感じる。西澤は、文子を抱きしめながら泣いていた。うれしくて、うれしくて・・・うれし泣き。そして文子も・・・


「私も・・・赤ちゃん、ありがとう・・・。」


と西澤の耳元で泣きながら伝えた。そして、離れると・・・


「これからもよろしくお願いします、ママ。」
「よろしくお願いします、パパ。」

と微笑みながらそう言葉を交わした。今日から始まる新しい生活の為に・・・

End
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