西澤さんと文子さん

文子が立っているホームと反対側のホームにいる西澤。お互いに姿を見つけた瞬間、ニコッと笑う。手を振ったり、大声で話したいけど、彼らの間にはたくさんの“声”と“音”と“人”がいてかき消されそうだった。その時、西澤の視線に入ってきたのは文子の隣で電話をかける女子高生・・・

(そうだ!)

そういうと、西澤はポケットから携帯電話を取り出した。


数秒後、文子の携帯電話が着信を告げる。携帯が表示している名前は“西澤亮太”だった。文子はおどおどしながらも西澤のいるホームを見ると西澤が携帯電話を指差している。ホッとした文子は携帯の通話ボタンを押した。


「携帯電話ってすごいね(笑)」


電話から飛び出した西澤の言葉。文子もにこっとしながら「そうですね。」と話す。

電車が来るまで二人はずっと電話を介して話し続ける。それだけでもうれしかった。それだけでも楽しかった。


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