西澤さんと文子さん

「間違いなく、インフルエンザA型ですね。今日から1週間絶対安静で。」
「わかりました。」
「ご主人もですよ。」
「ぼ、ぼくもですか?」
「奥さんに付き添ってあげてください。」

診察が終わり、会計と処方箋を待っていると、そこに創輔と由美子が到着。創輔はすぐに文子の隣に座り「寒くないか?」と言って自分の着ていたコートを文子に羽織らせる。


「お前・・・な・・・」


創輔は西澤の顔を睨みつけながらそうつぶやく。


「お兄さん。俺が・・・本当にすいません!」


西澤は、そういって創輔と由美子に頭を下げる。由美子は慌てて頭を上げるように促したが、創輔の怒りは収まらない。すると文子が、立ち上がろうとした創輔の右手の袖をちょんちょんと引っ張り始めた。


「どうした?」


「創輔・・・兄さん・・・私が悪いの・・・西澤さん・・・悪く・・・ないの・・・。だから・・・」


苦しそうな息使いで、無理やり話そうとする文子の顔を見て創輔も、その怒りを封印するしかなかった。


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