『さよなら』から始めよう
時間だけが
刻一刻と流れ
女の居ない部屋が
広く感じる
いつの間にか
何もない
カラーボックスは
何時から空だったのだろう
クローゼットの中は
隙間だらけで
数枚のコートが
寂しげに吊るさり
小さな食器棚だけ
女の使っていた物を残し
シンクの中で
口紅の付いた珈琲カップが
水に浸かる
積み重なった
雑誌の表紙
外国女性がカメラに向かい
意味なく笑っている顔が
何も考えずに
嘲笑っていた