Over Line~君と出会うために
 残るライブは、わずか八本。だからこそ、ここで倒れるわけにはいかない。自分の我儘が、大勢の人に迷惑をかけることになるのは、わかりきっていた。このツアーの成功のために走り回っている大勢のスタッフや、楽しみに待ってくれているのだろうファン。その全ての期待を裏切るには、『REAL MODEの東城貴樹』が持つ重みは大きすぎた。
 だが、それは、公の場に立つ自分を考えている貴樹の理屈だ。単なる東城貴樹の想いは、そんな理屈なんかどうでもいいことだった。東京に戻って来られた以上、彩のことしか考えたくなかった。
 彼女に、全てを話さなければならない。そうしないと、彩はいなくなってしまうような気がした。そんな焦りにも似た想いに、頭がおかしくなりそうで。
 どこから、何から話せば、わかりやすいのだろう。
 ぐるぐると、同じことばかりが頭の中を駆け回る。
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