ひだまりHoney

温かさに心が痺れた


ラーメンで満たされたお腹をさすりながら、私は夜気の中へと一歩を踏み出した。

店内との温度差に、羽織っていた上着の襟元をぎゅっと握り締める。

大通りから一本奥に入ったこの路地には、飲食店がずらりと並んでいて、それぞれの店の前で点灯するネオンが、夜の仄暗さをかき消してくれている。

色々な食べ物の匂いがその場に留まっていて、私は眉を寄せた。

ここに到着したその時はお腹も空いていたし良い匂いと感じたけれど、満腹の今は、油っぽいにおいがちょっとだけ不快である。

私よりも先に店から出てきた松戸さんが、道の真ん中で鼻歌を歌っている。この人は本当にマイペースだ。

微妙に音程のずれている歌声を気にとめることなく、松戸さんと私の間を二人の女性が通り過ぎていった。

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